日本海護謨大学セミナー

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第4回 合成ゴム(原料)各論

 合成ゴムには、SBR、NBR、CRなどいろいろな種類のものが開発され、多方面で使用されている。それぞれのゴムには、それぞれの特色があるので、ここでは各合成ゴムについて学習してみよう。

 

1.NR(天然ゴムまたは、IR(イソプレンゴム)

 

〔 特 徴 〕

 

  1. 純ゴム配合でも、機械的強度が優れている。
  2. ゴム弾性が大きく、動的発熱性が小さい
  3. 耐引き裂き性が優れている。
  4. 耐寒性が良好で、一番ゴムらしい。
  5. 加工性、接着性、粘着性が優れている。
  6. 未加硫時の強伸度(強さ・伸びの程度)が大きい。
  7. 大型自動車タイヤでの実用性能に優れている。

 

〔 欠 点 〕

 

  1. SBR、BRに比べ、耐摩耗性が劣る。
  2. 耐熱性が悪く、軟化型老化をする。
  3. 平坦加硫性(適正加硫時間が長い性質)に乏しい。従って、加硫オーバーになり易い。
  4. 練り工程による粘度変化が大きい。
  5. 素練りが必要で、冬季には原料ゴム、未加硫生地が保管中硬くなる。

 

 IR(イソプレンゴム)は化学構造がNRと同じであるので、その特性、用途はNRと同等であるが、細部については差がある。IRは工業製品であるため品質が安定し、耐寒性と伸張率ではNRより優れている。しかし、モジュラス(同じ伸び率での強度)は低く、未加硫生地の強度も小さい。

 

2.SBR(スチレン・ブタジエンラバー)

 

〔 特 徴 〕

 

  1. 特性がNRに近く、比較的安価で、加工性に優れ、バランスのとれたゴム。
  2. NRに比べ品質が安定し、価格の変動が少ない。
  3. 最も大量に使用されている。(最近は、ラジアルタイヤの普及により、NRに押され気味)
  4. NR、BR(ブタジエンラバー)より耐油性が良い。
  5. 加硫平坦性がある。

 

〔 欠 点 〕

 

  1. ゴム弾性が若干低く、動的発熱性が大きい。
  2. NRに比べ引き裂き抵抗が乏しい。
  3. 耐屈曲亀裂発生には優れるが、亀裂成長が早い。
  4. 耐オゾン性ではNRに劣り、数は少ないが大きくて深い亀裂が入る。
  5. 耐寒性はNR、BRより劣る。
  6. 未加硫生地の強度が低く、また、補強剤(カーボンなど)を配合しないと、実用的な加硫特性が得られない。
  7. 加硫速度はNR、BRより遅い。

 

 他のゴムとブレンドして使われることが多い。 (例:SR-160B SR-255W等)

 

3.BR(ブタジエンラバー)

 

〔 特 徴 〕

 

  1. ゴム弾性は最高。
  2. 耐摩耗性は最高で、NR、SBRとブレンドしてタイヤに大量に使われる。
  3. 価格はSBR並みで、耐寒性に優れる。
  4. 透明性に優れる。また、プラスチックの耐衝撃性改質のためにブレンドされる。

 

〔 欠 点 〕

 

  1. 引き裂き抵抗が劣り、チッピング(欠け、かじり傷)現象が発生し易い。
  2. 粘着しに乏しく、加工性が若干劣る。
  3. 補強剤の配合が必要。
  4. 機械的強度は、NR、SBRより低く、ほとんどブレンドして使われる。
  5. ウエット・スキッド抵抗が小さい。

 

4.IIR(ブチルゴム イソブチレン・イソプレンラバー)

 

〔 特 徴 〕

 

  1. 耐気体透過性に優れる。(用途例:タイヤのチューブ)
  2. 耐候性、耐オゾン性、耐熱性に優れる。
  3. 反発弾性がゴム中最小で、振動吸収特性が優れる。
  4. 耐水性、耐薬品性に優れる。
  5. 極性溶剤に対する耐溶剤性に優れ、また、動植物油についても耐性がある。
  6. EPTとの親和性が大きく、互いに補完しあう。
  7. 純ゴム強度が比較的大きい。
  8. 電気絶縁性に優れる。

 

〔 欠 点 〕

 

  1. ゴム弾性に乏しく、耐摩耗性が劣る
  2. 熱軟化型の老化を示す。
  3. 加硫速度が遅い。
  4. EPTに比べ、耐熱性と耐オゾン性が劣る。(ブレンドする)
  5. ブチルゴム同士、塩素化ブチルゴム、EPT以外のゴムとの親和性に乏しい。

 

5.EPT(エチレン・プロピレン・ターシャリーラバー)

 

〔 特 徴 〕

 

  1. 耐候性、耐オゾン性、耐熱性が優秀で、IIRやSBRの改質のためにブレンド使用される。
  2. 耐寒性、耐水性、電気特性に優れる。
  3. 高充填性に富んでいる。
  4. 比重が0.86で最小。
  5. 耐薬品性が優秀。極性溶剤に対する耐溶剤性が大きい。

 

〔 欠 点 〕

 

  1. 接着性、粘着性に乏しい。
  2. 加硫速度が遅い。
  3. 動的発熱性が大きい。
  4. 耐油性は、NRと同等で非常に劣る。
  5. 耐引き裂き性がやや劣る。

 

 EPTのTの意味は、EP(エチレン・プロピレン)が分子構造に二重結合を持っていないため、加硫が出来ない。このため二重結合のある第三(ターシャリー T)成分を入れてある。EPDMとも言う。

 

6.CR(クロロプレンラバー)

 

〔 特 徴 〕

 

  1. NRに近いゴム弾性を持っている。
  2. 耐候性、耐オゾン性、耐熱性がNRやSBRより一段と優れ、かつ中程度の耐油性を併せ持っている、万能的なゴムである。
  3. 難燃性に優れ、接着性、加工性も良好。
  4. 市場に現れたのも古く、長年月の使用実績に裏づけされ、末端ユーザーまでその特性が、十分浸透された強みを持っている。
  5. 純ゴム配合でも、十分な強度を持っている。
  6. 未加硫生地の強度が強いので、未加硫状態でも用途によっては、十分使用に耐える特性を有し、接着剤用に大量に使用される。

 

〔 欠 点 〕

 

  1. 多面的な特性を持っており、一特性を取り上げた場合、競合している他のゴムより見劣りがする傾向にある。
  2. 比重が1.23で比較的大きく、容積コストの面で不利である。
  3. 結晶性が大きいため、低温側で温度に対する依存性が大きい。結晶化速度やゴムの粘度の違いによって種類が多い。
  4. 耐水性、電気絶縁性が劣る。
  5. 耐油性を必要としない用途には、価格的、性能的理由でEPT化が進んでいる。

 

7.NBR(アクリロニトリル・ブタジエンラバー)

 

〔 特 徴 〕

 

  1. 耐油性が極めて優秀。アクリロニトリルの量によって、高ニトリル、中高ニトリル、中ニトリル、低ニトリル等があり種類が多い。ニトリル量によって、耐油性等の特性が大きく異なる。
  2. 加工性が良好で、優れた機械的強度を有する。
  3. 塩化ビニールとのブレンド性が良い。
  4. 耐油性ゴムの代表的存在であり、長年月の使用実績がある。
  5. 価格、加工性、性能等のバランスのとれた耐油性合成ゴムである。

 

〔 欠 点 〕

 

  1. 耐オゾン性が劣り、耐熱性もやや不足している。耐オゾン性は、塩化ビニールをブレンドすることにより、格段に向上する。但し、屈曲性が悪くなる。老化防止剤の大量配合で、耐オゾン性をカバーできるが、表面に薬品が出てくる(ブルーム)ので、過酷な使用分野では、ヒドリンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴムに変わりつつある。
  2. 耐寒性が劣る。耐寒性可塑剤(簡単に軟化剤と考えてよい)によって改善されるが、可塑剤が使用中に揮発や抽出され、耐寒性が低下する恐れがある。
  3. 極性溶剤に対する耐溶剤性が劣る。
  4. 耐水性、耐薬品性が劣る。
  5. 硫黄の溶け込みが悪い(溶解度が小さい)ので、未加硫生地の表面に硫黄が出てきたり(析出)、白物の場合硫黄の粒が斑点となったりする。

 

8.Q(シリコンラバー)

 

〔 特 徴 〕

 

  1. 耐熱性、耐寒性が極めて優秀であり、物理的特性の温度に対する依存性が、合成ゴム中一番
  2. 高温(230℃)から低温(-60℃)にわたり、その特性を発揮し、両極端の温度領域で使用可能な唯一のゴムである。
  3. 耐油性も若干ある。耐溶剤性、耐オゾン性、耐候性に優れ、非粘着性である。
  4. 電気的性質が優秀で、無味無臭である。耐屈曲性も優秀である。(電卓のスイッチングラバーに使用)
  5. 気体透過性が一番大きく、比重は小さい。

 

〔 欠 点 〕

 

  1. 価格がフッ素ゴムに次いで高い。
  2. 機械的強度が小さく、特に引き裂き強度が劣る。
  3. 耐薬品性に乏しく(気体透過性が悪い)、強酸、強アルカリに弱い。
  4. 高温の飽和上蒸気では、解重合(分解)が発生し、劣化する傾向にある。
  5. 二次加硫(200℃程度の温度での熟成)を必要とする。
    ・・・・・過酸化物架橋(橋架け)のため、反応副産物が発生し、臭いが残る。これを揮発させる目的で、二次加硫を行う。

 

9.U(ウレタンラバー)

 

〔 特 徴 〕

 

  1. 高硬度でも高弾性を有する。
  2. 耐摩耗性が極めて優秀。
  3. 耐油性、耐オゾン性に優れている。耐老化性も良い。

 

〔 欠 点 〕

 

  1. 耐熱性、特に湿潤時の耐熱性が劣る。
  2. 加水分解性(水分による分解、老化)があり、耐水性や耐薬品性が劣る。
  3. 動的発生熱を内部蓄積する傾向があり、高速タイヤ等には不適。
  4. 価格が比較的高い。

 

10.その他のゴム

 

 1~9のゴムのほかにも、用途に応じていろいろな特殊ゴムがある。CSM(ハイパロンゴム)、RB(1-2ブタジエンゴム)、CO(ヒドリンゴム)、ACM(アクリルゴム)、T(チオコールゴム)、FKM(ふっ素ゴム)、塩素化ブチルゴム、塩素化ポリエチレン等があるが、ここでは省略する。