ゴムについて
第4回 合成ゴム(原料)各論
合成ゴムには、SBR、NBR、CRなどいろいろな種類のものが開発され、多方面で使用されている。それぞれのゴムには、それぞれの特色があるので、ここでは各合成ゴムについて学習してみよう。
1.NR(天然ゴムまたは、IR(イソプレンゴム)
〔 特 徴 〕
- 純ゴム配合でも、機械的強度が優れている。
- ゴム弾性が大きく、動的発熱性が小さい
- 耐引き裂き性が優れている。
- 耐寒性が良好で、一番ゴムらしい。
- 加工性、接着性、粘着性が優れている。
- 未加硫時の強伸度(強さ・伸びの程度)が大きい。
- 大型自動車タイヤでの実用性能に優れている。
〔 欠 点 〕
- SBR、BRに比べ、耐摩耗性が劣る。
- 耐熱性が悪く、軟化型老化をする。
- 平坦加硫性(適正加硫時間が長い性質)に乏しい。従って、加硫オーバーになり易い。
- 練り工程による粘度変化が大きい。
- 素練りが必要で、冬季には原料ゴム、未加硫生地が保管中硬くなる。
IR(イソプレンゴム)は化学構造がNRと同じであるので、その特性、用途はNRと同等であるが、細部については差がある。IRは工業製品であるため品質が安定し、耐寒性と伸張率ではNRより優れている。しかし、モジュラス(同じ伸び率での強度)は低く、未加硫生地の強度も小さい。
2.SBR(スチレン・ブタジエンラバー)
〔 特 徴 〕
- 特性がNRに近く、比較的安価で、加工性に優れ、バランスのとれたゴム。
- NRに比べ品質が安定し、価格の変動が少ない。
- 最も大量に使用されている。(最近は、ラジアルタイヤの普及により、NRに押され気味)
- NR、BR(ブタジエンラバー)より耐油性が良い。
- 加硫平坦性がある。
〔 欠 点 〕
- ゴム弾性が若干低く、動的発熱性が大きい。
- NRに比べ引き裂き抵抗が乏しい。
- 耐屈曲亀裂発生には優れるが、亀裂成長が早い。
- 耐オゾン性ではNRに劣り、数は少ないが大きくて深い亀裂が入る。
- 耐寒性はNR、BRより劣る。
- 未加硫生地の強度が低く、また、補強剤(カーボンなど)を配合しないと、実用的な加硫特性が得られない。
- 加硫速度はNR、BRより遅い。
他のゴムとブレンドして使われることが多い。
(例:SR-160B SR-255W等)
3.BR(ブタジエンラバー)
〔 特 徴 〕
- ゴム弾性は最高。
- 耐摩耗性は最高で、NR、SBRとブレンドしてタイヤに大量に使われる。
- 価格はSBR並みで、耐寒性に優れる。
- 透明性に優れる。また、プラスチックの耐衝撃性改質のためにブレンドされる。
〔 欠 点 〕
- 引き裂き抵抗が劣り、チッピング(欠け、かじり傷)現象が発生し易い。
- 粘着しに乏しく、加工性が若干劣る。
- 補強剤の配合が必要。
- 機械的強度は、NR、SBRより低く、ほとんどブレンドして使われる。
- ウエット・スキッド抵抗が小さい。
4.IIR(ブチルゴム イソブチレン・イソプレンラバー)
〔 特 徴 〕
- 耐気体透過性に優れる。(用途例:タイヤのチューブ)
- 耐候性、耐オゾン性、耐熱性に優れる。
- 反発弾性がゴム中最小で、振動吸収特性が優れる。
- 耐水性、耐薬品性に優れる。
- 極性溶剤に対する耐溶剤性に優れ、また、動植物油についても耐性がある。
- EPTとの親和性が大きく、互いに補完しあう。
- 純ゴム強度が比較的大きい。
- 電気絶縁性に優れる。
〔 欠 点 〕
- ゴム弾性に乏しく、耐摩耗性が劣る
- 熱軟化型の老化を示す。
- 加硫速度が遅い。
- EPTに比べ、耐熱性と耐オゾン性が劣る。(ブレンドする)
- ブチルゴム同士、塩素化ブチルゴム、EPT以外のゴムとの親和性に乏しい。
5.EPT(エチレン・プロピレン・ターシャリーラバー)
〔 特 徴 〕
- 耐候性、耐オゾン性、耐熱性が優秀で、IIRやSBRの改質のためにブレンド使用される。
- 耐寒性、耐水性、電気特性に優れる。
- 高充填性に富んでいる。
- 比重が0.86で最小。
- 耐薬品性が優秀。極性溶剤に対する耐溶剤性が大きい。
〔 欠 点 〕
- 接着性、粘着性に乏しい。
- 加硫速度が遅い。
- 動的発熱性が大きい。
- 耐油性は、NRと同等で非常に劣る。
- 耐引き裂き性がやや劣る。
EPTのTの意味は、EP(エチレン・プロピレン)が分子構造に二重結合を持っていないため、加硫が出来ない。このため二重結合のある第三(ターシャリー T)成分を入れてある。EPDMとも言う。
6.CR(クロロプレンラバー)
〔 特 徴 〕
- NRに近いゴム弾性を持っている。
- 耐候性、耐オゾン性、耐熱性がNRやSBRより一段と優れ、かつ中程度の耐油性を併せ持っている、万能的なゴムである。
- 難燃性に優れ、接着性、加工性も良好。
- 市場に現れたのも古く、長年月の使用実績に裏づけされ、末端ユーザーまでその特性が、十分浸透された強みを持っている。
- 純ゴム配合でも、十分な強度を持っている。
- 未加硫生地の強度が強いので、未加硫状態でも用途によっては、十分使用に耐える特性を有し、接着剤用に大量に使用される。
〔 欠 点 〕
- 多面的な特性を持っており、一特性を取り上げた場合、競合している他のゴムより見劣りがする傾向にある。
- 比重が1.23で比較的大きく、容積コストの面で不利である。
- 結晶性が大きいため、低温側で温度に対する依存性が大きい。結晶化速度やゴムの粘度の違いによって種類が多い。
- 耐水性、電気絶縁性が劣る。
- 耐油性を必要としない用途には、価格的、性能的理由でEPT化が進んでいる。
7.NBR(アクリロニトリル・ブタジエンラバー)
〔 特 徴 〕
- 耐油性が極めて優秀。アクリロニトリルの量によって、高ニトリル、中高ニトリル、中ニトリル、低ニトリル等があり種類が多い。ニトリル量によって、耐油性等の特性が大きく異なる。
- 加工性が良好で、優れた機械的強度を有する。
- 塩化ビニールとのブレンド性が良い。
- 耐油性ゴムの代表的存在であり、長年月の使用実績がある。
- 価格、加工性、性能等のバランスのとれた耐油性合成ゴムである。
〔 欠 点 〕
- 耐オゾン性が劣り、耐熱性もやや不足している。耐オゾン性は、塩化ビニールをブレンドすることにより、格段に向上する。但し、屈曲性が悪くなる。老化防止剤の大量配合で、耐オゾン性をカバーできるが、表面に薬品が出てくる(ブルーム)ので、過酷な使用分野では、ヒドリンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴムに変わりつつある。
- 耐寒性が劣る。耐寒性可塑剤(簡単に軟化剤と考えてよい)によって改善されるが、可塑剤が使用中に揮発や抽出され、耐寒性が低下する恐れがある。
- 極性溶剤に対する耐溶剤性が劣る。
- 耐水性、耐薬品性が劣る。
- 硫黄の溶け込みが悪い(溶解度が小さい)ので、未加硫生地の表面に硫黄が出てきたり(析出)、白物の場合硫黄の粒が斑点となったりする。
8.Q(シリコンラバー)
〔 特 徴 〕
- 耐熱性、耐寒性が極めて優秀であり、物理的特性の温度に対する依存性が、合成ゴム中一番
- 高温(230℃)から低温(-60℃)にわたり、その特性を発揮し、両極端の温度領域で使用可能な唯一のゴムである。
- 耐油性も若干ある。耐溶剤性、耐オゾン性、耐候性に優れ、非粘着性である。
- 電気的性質が優秀で、無味無臭である。耐屈曲性も優秀である。(電卓のスイッチングラバーに使用)
- 気体透過性が一番大きく、比重は小さい。
〔 欠 点 〕
- 価格がフッ素ゴムに次いで高い。
- 機械的強度が小さく、特に引き裂き強度が劣る。
- 耐薬品性に乏しく(気体透過性が悪い)、強酸、強アルカリに弱い。
- 高温の飽和上蒸気では、解重合(分解)が発生し、劣化する傾向にある。
- 二次加硫(200℃程度の温度での熟成)を必要とする。
・・・・・過酸化物架橋(橋架け)のため、反応副産物が発生し、臭いが残る。これを揮発させる目的で、二次加硫を行う。
9.U(ウレタンラバー)
〔 特 徴 〕
- 高硬度でも高弾性を有する。
- 耐摩耗性が極めて優秀。
- 耐油性、耐オゾン性に優れている。耐老化性も良い。
〔 欠 点 〕
- 耐熱性、特に湿潤時の耐熱性が劣る。
- 加水分解性(水分による分解、老化)があり、耐水性や耐薬品性が劣る。
- 動的発生熱を内部蓄積する傾向があり、高速タイヤ等には不適。
- 価格が比較的高い。
10.その他のゴム
1〜9のゴムのほかにも、用途に応じていろいろな特殊ゴムがある。CSM(ハイパロンゴム)、RB(1-2ブタジエンゴム)、CO(ヒドリンゴム)、ACM(アクリルゴム)、T(チオコールゴム)、FKM(ふっ素ゴム)、塩素化ブチルゴム、塩素化ポリエチレン等があるが、ここでは省略する。

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